灯台さんと琥珀の空
琥珀色の空が広がる海辺の岬で「灯台さん」は暮らしていました。
灯台さんは昼間は近くの村の子ども達と遊び
夜は大きな灯台として、漁に出ていた大人達の船が戻れるように灯りを灯していました。
琥珀色の空が広がる海辺の岬で「灯台さん」は暮らしていました。
灯台さんは昼間は近くの村の子ども達と遊び
夜は大きな灯台として、漁に出ていた大人達の船が戻れるように灯りを灯していました。
灯台さんはこの琥珀色の空を眺めるのが大好きでした。
空と海はどこまでも続いて、でも混じり合うことなく、くっきりと分かれていて…
その様子をいつまでも眺めることができました。
ある日、灯台さんが1人岬で釣りをしていると、空に大きな顔が浮かんで
となげきました。
顔は歪みもつれながら小さくなり、プツンっと音を立てて見慣れない服装の男の人の姿になりました。
男の人は「ああ、なんてことだ、申し訳ないことをした」と空を仰いで繰り返しました。
「おじさんだれ?どうしたの?」灯台さんは聞きました。
男の人は早口でこういいました。
「私は『世界の樹』を管理している者です。この世界には大きな大きな樹があって、樹のてっぺんには広い世界が広がっているのです。私はその樹の枝が伸び過ぎたり、葉が枯れたりしないように管理しているのです。」
灯台さんはよくわかりませんでした。
「へぇ、たいへんなおしごとですね」と言いました。
男の人は続けてこう言いました。
「世界の樹には大きなウロがありまして…そこに樹液が溜まって玉になっては、滴り落ちるのです。なにせ、世界を支える樹ですから、その樹液も不思議な力に満ちていて、油断するとその中にも世界が生まれてしまうのです。
私はその世界がまだ育たないうちに樹液の玉を突いて落とすようにしていたのですが、少し居眠りをしている間に……ああ、本当に申し訳ないことをした」と言いました。
「つまり、どういうこと?」
「つまり、この琥珀色の空の美しい世界は、世界の樹の樹液の雫の中に生まれてしまった世界なのですよ。
いつか樹液の玉が大きくなって、重さに耐えられなくなったら滴り落ちて、その時この世界も終わりを迎えます。でもここまで美しく育った世界を私の手で突いて落とすなんて、私にはできません…!」
男の人はそういうと、ペコペコおじぎをして「申し訳ない、申し訳ない」と呟きながら、また形が歪み、捻れて、消えてしまいました。
灯台さんはその夜、灯台としての仕事をしながら考えました。
まず、世界の樹の管理者に対して怒りが湧き上がりました。
無責任なこともさることながら、この世界が生まれたことを「申し訳ない」と言ったことに腹が立ちました。
次に「村の人達に教えなきゃ!」と思いました。
でも教えてどうするんだろう?教えられてどう思うんだろう?
そして悲しくなりました。
そしてまた怒りが湧き、灯台さんの心はぐるぐるめまぐるしく動きました。
灯台さんの灯に導かれて浜辺に帰ってきた漁師達が挨拶しても返事をしないほどでした。
翌朝、
村の子ども達が灯台さんの元に遊びに来ると、灯台さんは灯台の姿のままでした。
子ども達が呼びかけても返事はなく、ただ、扉が開いていました。
灯台さんの扉が開いているのを見るのは初めてのことだったので、子ども達は不思議に思って中に入りました。
中には壁の内側に沿って螺旋を描く階段があり、ひんやりした壁をさすりながら登ると琥珀色の空と海が見渡せました。
空と海はどこまでも続いて、でも混じり合うことなくくっきりと分かれていて…
綺麗でした
おしまい